初雪葛と定家葛2021年02月03日 07:20



 真冬になって常緑性の定家葛と、その園芸種である初雪葛の葉色が明らかに変わってきた。定家葛は緑から赤茶色に染まった。光沢があるので鼈甲色と呼んでもいい。初雪葛は全体が淡紅色に色付きつつある。

 もともと初雪葛は、春の新葉に入る淡いピンクの斑点が魅力で、斑は成長とともに徐々に白味が強くなる。名前の由来は、この美しい斑が初雪の積もったように見えるから。そして、秋を過ぎるころ班が薄れ緑が目立つようになり、その緑が寒さに当たると淡紅色に変わる。遅い紅葉である。初雪葛は変幻自在のこの葉色によって人気を博している。
 だから、初雪葛はどこの園芸店でも簡単に手に入る。

 かたや、定家葛はどこの園芸店でも簡単に手に入らない。
 定家葛は、式子内親王と藤原定家の悲恋物語である能楽「定家」がその名の由来とされる。グリーンカーテンになるほどの旺盛な成長力と、初夏の芳香を放つ小さな花や濃緑色の葉は魅力的と思うが、一見地味なせいもあって、初雪葛の親ともいえるのに、あまり市場には出回らない。

 初雪葛と定家葛は、さしずめ可憐な乙女と無骨な中年男といったイメージか。
 小さな庭の、寒さに耐える両葛を見比べながら、今日は立春である。

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