2021/7/28 N響室内合奏団 マーラー4番2021年07月28日 20:02



フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021
 N響室内合奏団 世紀末ウィーンの香り

日時:2021年7月28日(水)15:00
場所:ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:ヴァイオリン(リーダー)/篠崎史紀
   ソプラノ/盛田麻央
   ピアノ/入江一雄、ハーモニウム/山口綾規
   フルート/甲斐雅之、オーボエ/池田昭子
   クラリネット/松本健司、ファゴット/水谷上総
   ホルン/今井仁志、打楽器/植松 透・竹島悟史
   ヴァイオリン/白井 篤、ヴィオラ/中村翔太郎
   チェロ/市 寛也、コントラバス/西山真二
演目:ヨハン・シュトラウスⅡ/
     南国のバラ(シェーンベルク編)
     喜歌劇「ジプシー男爵」から 
      宝石のワルツ(ウェーベルン編)
     酒、女、歌(ベルク編)
   マーラー/交響曲 第4番(室内楽版・K.ジモン編)

 夏が来て、オリンピックの開幕に合わせるように、先週から「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021」が始まった。

 東京オリンピックは、これほどの困難のなか開催するだけで意義あるが、ここまでの日本選手の活躍は素晴らしい。喜びが倍加する。元気がもらえる。TVなど久しく見ていなかったのに、各競技とも気になってチラ見している。このまま安全に終わって、無事パラリンピックまで成し遂げてほしい。

 フェスタ サマーミューザ はオープニングコンサート(22日)に行くつもりだったが叶わず、そのあとのOEK、都響、読響をパス。一週間遅れでこのN響室内合奏団から参戦した。

 今日は室内楽版のマーラー「交響曲4番」がメイン、前座にJ・シュトラウスⅡのワルツ集の編曲版が演奏された。

 プログラムノートによると、ワルツ集はシェーンベルクが立ち上げた「私的演奏協会」で演奏されたという。「私的演奏協会」は現代音楽の普及をめざした音楽会で、協会の財政強化のための特別演奏会でワルツ集を取り上げた。こと、資金を得るという目的には、自分たち新ウィーン楽派の音楽では覚束なく、大衆の圧倒的支持を誇る人気曲か、歴史を経てきた古典ということになるのだろう。この辺りの事情は今でもそんなに大きく変わらない。背に腹はかえられぬということか。しかし、協会の活動は、こういった努力の甲斐も空しく、特別演奏会が開催された年いっぱいで停止したという。
 3曲のワルツとも弦楽四重奏にコントラバスを加えた弦5挺にハーモニウムとピアノという7人編成。ハーモニウムはオルガンの一種らしい。内声部を厚くするために使われているようだが音量的にも音質的にもあまり目立たない。控えめな楽器だ。
 3曲はシェーンベルク、ウェーベルン、ベルクが分担して編曲。ワルツの原曲そのものに馴染みがないうえに、素人ではそれぞれの編曲の特徴などもよく分からないけど、聴いたり踊ったりするには多分、賑やかしい原曲のほうが楽しいのではないかしら。

 マーラー4番の室内楽版も「私的演奏協会」で発表されたシェーンベルクの友人かつ弟子であるエルヴィン・シュタインの編曲版で知られている。今回は2007年にドイツの指揮者クラウス・ジモンがホルンを加えて編曲し直した版に基づいて演奏された。
 やはり、管と打楽器が入ると小オーケストラのようで交響曲として楽しめる。もちろんN響は名手ぞろい、弦の美しさは際立っている。木管は持ち替えはあるもののそれぞれ1本のみ、各楽器が溶け合いながらも主張し、音色の違いなど鮮明で面白い。金管はホルンが1人、主役級。演奏も立派で良い音を出していた。ジモンの編曲が有難い。打楽器は音量を絶妙にセーブしつつ室内楽として羽目を外さない。ピアノとハーモニウムは内声部を補強する。
 小編成ゆえにマーラーは旋律家だということが一層よく分かる。歌おうと思えば各楽章とも歌うことができるな、と聴きながらずっと夢想していた。

 マーラーの交響曲は、現在に至るまで室内楽版への改編が試みられており、ちょっと調べてみると、「4番」以外にも古いもの新しいもの合わせて「1番」「2番」「5番」「6番」「7番」「9番」「10番」それに「大地の歌」があるようだ。
 「大地の歌」は、8月にアンサンブル・アンテルコンタンポランが来日してシェーンベルク編曲版を公演するので聴く予定にしている。機会があれば他の交響曲の室内楽版も聴いてみたい。

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